ガドバーの異端児

Godber Turquoise Original ring 290

ガドバーは、1932年にネバダ州オースティンの標高2100mの高地で発見され、現在まで採掘が続けられている現役の鉱山だ。それよりも古い時代には「バーンナム」と呼ばれた時期もあるが、一般的には「ガドバー」という鉱山名の方が広く知られている。

原石の大半は塊状で採取され、成分にアルミニウムが多く含まれることから、やや白っぽいミルキーブルーになる。そこに、茶色や赤茶色のマトリックスが入るのが特徴とされている。

そんなガドバー産のターコイズを使ったこのリングは、小寺康友が製作したSKYSTONEオリジナル。現地を訪れた際に、鉱山主と直接交渉して入手した稀少な天然石のひとつだ。

20年かけて掘り当てたガドバー

「2006年に書籍の執筆のために、このガドバー鉱山を取材に行ったんです。ネバダのちょうど真ん中にあるオースティンという町で、ガソリンスタンドが2軒、モーテルが2軒、レストランが3軒、土産屋が3軒、教会が5軒、それだけの町。あとは誰もいません。

そこから15分くらいクルマを走らせて、農場みたいな平原の脇をクルマで入っていったところにあるのが、ガドバー鉱山。何も知らない人が見たら、こんなところにターコイズの鉱脈があるなんて想像もできないでしょう」

現在のオーナーは、金を掘るブルドーザーのオペレーターとして働く傍ら、ターコイズの採掘を趣味のように行っている。取材当時、10年ほど掘り続けていたが、お眼鏡にかなう石はなかなか出てこなかったのだという。

「ガドバーは赤土なので青い石がよく出た実績がありました。もちろん、過去にもいい石が採掘できていた鉱山なので、『もしいい石があったら連絡して』とだけ残して帰りました。それから何の音沙汰もないままでしたが、2015年の春に突然、『石が出たんだけど見に来ないか』という連絡が来たんです」

この石は、その連絡の際に送られてきた写真に最初に写っていたターコイズだった。

「ターコイズのバイヤーにとって、最初に見せた石が良くなければその次を買ってもらえないのは当然のこと。だから、最初に出てくるターコイズは良質なことが多いんです」

この石も然り。掘り出されたのはVHSテープ3本分くらいの原石だったが、そこから畳１畳を埋め尽くすくらいまでカットとスライスを繰り返して切り出された中のひとつだ。

「原石は1個の大きな石なので、色の薄い部分や濃い部分もある。スライスして小さくしていけば個数は多く取れますが、いい石ばかりとは限りません。その中から10個あるかないかという上質な石のひとつがこれでした。彼は10年以上かけて、この1個の“本物”を掘り当てたわけです」

青紫に輝く特別なガドバー

天然石の多くは、透明感や単一の色が評価される傾向がある。ヒスイ、ラピスラズリ、水晶などなど、色が濁っているものには高価な値はつきにくい。

対して、ターコイズは深い青から浅い青まで様々で、ほぼ必ず入っているマトリックスも含めて評価される。だからこそ、眺めていて飽きることがない。

他のジュエリーであれば、キズや欠陥と思われてしまう部分が、自然が生み出した偶然の価値になっているのだ。別の石との優劣よりも、目の前のその石にどんな神秘性やロマンが感じられるか。その意味で、この石は他のガドバーとは少し異なる。

「このターコイズは母岩の赤みがマトリックスの奥深くに見えることで、石としての色合いが紫色っぽくなっています。他のガドバーの石と比べても特徴的ですね。

石を引き立たせるシンプルなベゼルに

薄くラウンドした楕円形のターコイズに、赤茶色のマトリックスが入る。その美しさを語るのに言葉はいらない。なので、“添え物”のベゼルもシンプルなデザインとした。

リングの素材はコインシルバー。硬度が高く長く使われる銀貨の元となる素材は、24時間どんな時でもつけ続けても耐久性の面で不安がない。シャンクはシンプル的な造形とし、石の持つ存在感を際立たせた。

「大事なのはあくまでターコイズを引き立たせること」

小寺はそのために、今日も全霊を注ぎ込み、ターコイズに向き合っている。

Godber Turquoise Original ring 290

ガドバー・ターコイズのオリジナルリングです。
水色の美しさが際立つ石です。このような艶の良い大ぶりの石は、入手が困難となっています。
美しく気品を漂わせる石に合せて、上品にベゼルと装飾がデザインされています
石の大きさは最大　縦約28mm、横23mm、リングの重さが32gです。
コインシルバーと同じ成分の銀板を叩いてタガネとヤスリでリングを手作業で制作しています。